《四章 上巻》

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「…………が……だ。」 「……な………そ…。」 屋根からでは、話し声は聞き取れても会話の内容までは解らない。相当声を抑えて会話をしているようだ。 人数は…おそらく二人。話し方から、長人であるのは間違いない。 長人が多く泊まると聞いたこの宿。何らかの動きがあるのを期待してきてみたのだが、会話の雰囲気から何もなさそうだ。 だが、会話の内容が気になる。もし、何らかの動きをみせる内容であり、行動を起こしたら尾行するつもりなのだ。 そのためには…もっと近づく必要がある。そう思って、腰を上げようとした時 「たいした話はしていませんよ。」 「─────ッ!?」 背後からかけられたその声に驚き、反射的に前方の屋根に跳び移る。 先ほどまで乗っていた屋根を挟む形で、向こう側に人がいた。 闇よりも黒い漆黒の髪の毛と、月明かりに反射して不気味に浮かび上がる金色の目。 片目を仮面で隠し、半分しか表情は見えない。
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