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彼が指をさした方向を、ただ真っ直ぐ進んだ。変わらずにいてくれた彼を信じたかったのかもしれない。
そして、その場所はあまり遠くなかった。鼻をつく血の香りの後に見えたのは、倒れて動かない人間達。
すぐ近くで、刀を振り上げ、誰かの止めをさそうとする人の影が見えた。
音綱は阻止するために、取り出したクナイを投げつける。投げた数本のクナイは、避けられ当たる事無く地面に突き刺さる。
刀を持った者は、音綱の不意打ちの登場に驚いたのか、一目散に逃げ去った。
音綱は屋根から跳び下り、まずは倒れている男達の生死を確認する。
一人、また一人と息絶えているのを確かめた。四人が息を引き取っていた。急所は外れているから、出血多量が原因だろう。
少し離れたところに倒れている男は、かろうじて生きているようだ。
「この人………。」
かろうじて生きている男の傷は、急所から大きく外れていた。
斬られる時に体を咄嗟にずらしたのかもしれない。いずれにしても、危険な状態であることは変わらない。
音綱は、男の傷に負担がかからないよう抱き上げる。屯所へ最短の道で帰るために、再び屋根に跳び乗る。
行きとは違い、低めに跳びながら屯所へと戻った。
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