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子供のころはよく駆け回っていた。
車がほとんど通らない道路を、
川岸を、
田んぼを、
暗くなるまで走り回って、遊び回って、ドロドロになって家に帰ると温かな家庭の匂い。
よくコケては泣いて、笑う母親に消毒をしてもらって。
その度に言われていた言葉。
「いっぱいこけなさい、泣きなさい。こけて、立ち上がって、そしてドンドン強くなるのよ。」
そのときは意味がわからなかった。
でも大人になるとわかる。
大人になったらコケることはない。
前を向かず、下を向いて歩き、純粋だった子供のときの気持ちはどこかにいってしまった。
いまだからこそ、ふとした拍子になつかしき郷愁の想いを感じる。
それは大人になるうちに忘れてしまうもの。
生きることと引き換えに、大切なものを…
忘れていく。
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