DiamondDust Rebellion

13/23

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 かすがは酷く疲労していた。 恐らく自分の隊が来て、冬獅郎の手当てをしていたと言うのは嘘だろう。 慣れない治療系の鬼道を使ったのだろう、と冬獅郎は予想した。 その反動と宝珠の反発する力によって、かすが自身に負担を負わせているのだろうと。 「大丈夫か、かすが」 「えぇ、平気。ちょっと、黒梅を使った反動が今来てね……」 「黒梅?……! まさか、あの時の?!」 小さく微笑む。 無茶をしなければ何ともないと言う。 宝珠の霊圧が安定すれば、始解程度なら大丈夫だと言った。 無理をしているのは冬獅郎も同じことで、互いに無理を承知で行動して居るようなものだ。 「冬獅郎、誰か居る」 「あぁ、解っている」 足を止め、斬魄刀を握る手に力が入る。 柱の陰から一人の青年が姿を現した。 ゆっくりと斬魄刀を抜刀するかすがを、そっと制す。 「冬獅郎。後ろの人は誰だい?」 「言わなくても、テメェなら知ってんだろ」 「……冬獅郎の口から聞きたかったんだが、仕方がないね」 「……かすが。貴方が『草冠宗次朗』ね。王印は、貴方には扱えない」 「確かに、そうかもしれないね。だけど、そうじゃないかもしれない」 何処か掴めない宗次郎を目にして、かすがは正直やりにくかった。 冬獅郎の邪魔をしないと言い切ったが、一発宗次郎に入れないと気が済まない気がしてきた。 それを感じたのか、冬獅郎が顔だけ向けて睨んだ。 小さく首を横に振れば、冬獅郎は再び宗次郎の方を向いた。 「…王印は、何処だ」 「……此処にあるよ。俺たちの夢の為に使うものだからね」 「夢?」 宗次朗が王印を掲げた瞬間、かすがは宗次朗から庇うように冬獅郎に抱きついた。 王印から光が溢れだし、視界を白く埋めた。 かすがは冬獅郎を話すまいと力を強く入れた。  気付けば尸魂界の双極の丘に居た。 自分の中で宝珠が騒ぎだすのが解る。 そっと胸に手を当てれば、冬獅郎が斬魄刀を持っていない手で触れてくる。 「冬獅郎」 「心配するな、かすが。俺が守ってやる」 「…ただ守られるだけなんて、嫌だからね」 「フッ」 冬獅郎が触れて居た手を重ねる。 深く息を吸い、ゆっくりと吐きだした。 「魅了せよ、桜煉華」 黒い桜の花弁が舞う。 廻りに集まってきた死神。 恋次、一角、弓親の三人だった。 にっこり笑うかすがに、冬獅郎はため息をついた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加