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苦虫を噛む様な恋次に対し、一角や弓親は俄かに笑っている。
「どうやら、俺らが一番乗りだな」
「そのようだね、一角」
「日番谷隊長…棗隊長…」
冬獅郎と背中合わせに成るように立つ。
冬獅郎は宗次郎の方を向いたまま。
かすがの斬魄刀を握るその手は、先ほどとは違い震えては居なかった。
「冬獅郎とわたし、捕えるとか言うのでしょう?なら、本気で来なさい。わたしが相手してあげるから」
「棗隊長!良いのですか?!」
「しっつこいわねー…言ったはずよ。わたしは『死神が嫌い』だって。今わたしが死神でいるのは『冬獅郎に恩を返すため』なんだから、ごちゃごちゃ言ってるんじゃないわよ」
一気に上げたかすがの霊圧に恋次らは瞳を見開く。
どんなに霊圧を上げても驚くことはなかったが、今のかすがは指一本でも動かせば傷を負いそうなくらい刺々しいモノへと変貌している。
「やめろ、かすが」
冬獅郎の一言で、少しだけ緩和する。
緩和しても、動くことは出来ない。
宗次朗はただかすがを睨むように見ている。
「そこまでだ!」
冬獅郎が何か言おうと思った時、砕蜂が姿を現した。
刑軍が冬獅郎、かすが、宗次郎を取り囲んだ。
砕蜂が何か言いたそうな瞳をしていたが、何も気付かないフリをした。
「堕墜、伝言受け取った?」
「勿論です、かすが様」
後から現れた零番隊の上位席官七人。
副隊長の月下堕墜、三席の霧風静、四席の鬼灯夜狐、五席の鬼灯火狐、六席の鷹飛瑠、七席の琉炎夜行。
何の伝言なのか冬獅郎には解らなかったが、かすがのやることには何も言わない。
言ったところで何か変わる訳でもない。
「砕蜂隊長。零番隊が廃絶されようが、零番隊は棗かすが隊長の命を最優先させて頂きます」
廻りに集まって来た死神たちは驚いた。
堕墜が手を挙げれば、平の隊士たちが刑軍らを包囲した。
「かすが様。これで宜しかったですか?」
「えぇ、ありがとう。わたしの我が儘に付きあってもらちゃってさ」
「いいえ。かすが様らしいと、隊士らは話しておられました。それに、たとえ隊が廃絶されようともかすが様に従うと言うと言い切った隊士が大勢居ました」
「あら?移転属願は一通も出なかったの?」
「えぇ。一通も」
笑うかすがと堕墜たち。
冬獅郎は瞳を見開き、かすがを見た。
かすがはただ微笑むだけ。
砕蜂は構わず、命令を出した。
かすがも応戦するように、指示を出した。
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