DiamondDust Rebellion

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 瑠から渡された風呂敷の中に入っていたのは、『零』と書かれた隊首羽織。 それと、文が一つ。 その文には数行しか書かれてなかったが、かすがの涙腺を緩ませるには十分だった。 「かすが?」 「静のばぁーか。何、ご丁寧に隊首羽織縫ってるのよぉ…」 「あら。それ、静の手作り。良いじゃない、そう言うのも」 広げた隊首羽織の羽織裏は前と同じ漆黒の色をしているが、裾の方に銀色で桜と六花が踊っている。 素人が作ったとは思えない職人技に、かすがは隊首羽織を抱きしめた。 「羽織なさいな、かすが隊長」 「乱菊副隊長ぉー…」 「羽織らねぇと霧風に申し訳ねぇぞ」 「かすが様、どうか私たちの気持ちを…」 「とうしろー…瑠………ありがとう」 瞳にたまった涙をぬぐい、背を向けた。 ギュッと抱いた隊首羽織に袖を通した。 前のより裾丈が長くなったような感じがあったが、そこはかすが好みに仕上げてくれているようだ。 背に斬魄刀を背負い、留め具は銀杏の葉。 これも静が選んで買って来たものだ。 「行こう、冬獅郎」 「あぁ」 差し出された手を握る。 その暖かさに、かすがは頬が赤くなる。 背負った斬魄刀が小さく鼓動した。 この姿が良い、と言って居るようにも感じる。 小さく微笑み、そびえた塔の様なものを睨んだ。 二手に分かれ、宗次郎が居るそこへと向かった。 かすが、瑠、一護、ルキア、恋次と冬獅郎、乱菊、一角、弓親と。 かすがはチラッとだけ冬獅郎を見送り、斬魄刀を抜いた。 「魅了せよ、桜煉華」 黒桜の花弁が舞い、刃渡り六尺の長さへと斬魄刀を変えた。 先頭を走るかすがの隊首羽織の裾がはためく。 その度、銀の糸で刺繍された桜と六花が揺らめく。 「崖を直線で登った方が早くないか?」 「ちょ、ちょくせんで?!」 「無理ではないが……」 巨大な虚となったヤンを見た。 かすがは苦笑し、上を見上げた。 「夜一様たちが虚を相手にしてるのだ。負担を掛けさせるのは得策ではないわ」 そういったかすがと瑠はもう垂直に崖を上って行く。 それはまるで崖を走るように登る。 「瑠、ごめん」 「いいえ。副隊長の代わり、と言うのも苦ではありません」 それだけ。 かすがのゆく道を邪魔する虚たちは瑠の放つ鬼道で、吹き飛ばされて行く。
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