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かすがは檜佐木達と軽く打ち合わせをした。
まず神社の敷地内に唯一の建物…社を取り囲み、自主を促すこと。
それで応じなければ、縛道を用いて強制的に、と。
かすがは説得に回る、と言った。
本当は説得云々は演技をするつもりでいた。
勿論その事は檜佐木達には話していない。
話すつもりもない。
「棗隊長、日番谷隊長は大人しく従ってくれるでしょうか?」
「……さあ、どうでしょうね。わたしも彼の性格は知ってるつもりだけど、そればかりは解らないわ」
「すみません、棗隊長」
「何が?」
「その…本当は棗隊長には……」
「現世に居る中で一番格が上なんだから仕方がないわ。ホントなら、アイツのあの顔にグーで殴りたかったけど」
そう苦笑すれば、若干引く檜佐木と吉良。
かすが自身冬獅郎を『隊長』と付けて呼ばなかった。
隊士の居る前では呼んでいた記憶があるが、そのほかは全く呼んでいた記憶はない。
冷たい空気に触れ、小さく笑みを浮かべる。
「隊長」
「夜行?」
「霧風三席より、伝言が」
檜佐木たちに断りを入れ、離れた場所兵と移動した。
静からは京楽隊長と伊勢が『草冠宗次朗』について調べている事を告げた。
草冠と冬獅郎の関係について、いまだに謎だと言う事。
「夜行。四十六室の記録を漁れる?」
「四十六室…ですか?」
「えぇ。その方が手っ取り早いと思うけど…無理をしない程度、で良いわ」
「霧風三席に伝えておきます。中央図書室に伊勢副隊長と京楽隊長だけでは不安なので、僕も行きます」
「そう。なら、堕墜に伝えて欲しいのがある」
「御意に」
かすがは堕墜への伝言を伝え、かすがは始まっただろうその神社へと歩みを進めた。
本当ならば、剣を交えたくはない。
それも行かないのだろう、と小さくため息を零した。
神社から檜佐木と吉良の声が聞こえた。
同時に冬獅郎の声。
頬が緩むのが解った。
『日番谷隊長、緊急特令です。至急、瀞霊廷にお戻りくださいっ』
『従うつもりはねぇ』
その声は確かに聞きなれた彼の声。
そっと斬魄刀に触れ、手を刃に滑らせる。
小さく解号を呟けば、刃渡り六尺のかすがの斬魄刀・桜煉華が舞う。
斬魄刀を持っていない方の手をそっと、神社の方へ向ける。
かすがの周りを舞って居た黒い桜の花弁が、神社の方へと向かっていく。
小さく祈りを乗せて。
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