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両親のいない俺に二人の優しさが身にしみて
「あり、…ありがとうございます。お年玉におせちまでいただいて……俺、来年もこの仕事頑張ります!」
深く頭を下げて工場を後にした。
風が冷たくてジャケットのポケットに手を突っ込むと二人のお年玉が触れてくる。
「睦月、喜ぶだろうな」
俺だって嬉しいんだ。
久し振りに人の優しさに触れて、寒いのにじんわりと胸があったかくて顔が綻んでしまう。
早く睦月の笑顔を見たくて俺は家まで走った。
途中いつも銭湯に行く待ち合わせをしているコンビニに寄ってみる。
今日は仕事納めで早く上がったから睦月は家にいるって分かってるけど
「将之君。今日はまだ睦月君来てないよ」
そう言いながらコンビニのオーナーの奥さんが熱々のおでんを容器に入れて渡してくれた。
「これ晩御飯のオカズにして」
お金を払おうとして
「たいしたものじゃないけど。少し早いお年玉だから」
オーナーの奥さんは早く帰って睦月君と食べなさいって
「ありがとうございます」
今日は人の優しさにいっぱい触れて涙腺がゆるんでしまう一日なんだろうか?
俺ってこんなに泣き虫だったっけって思ってしまう。
奥さんの笑顔に見送られて家に帰る。
辛い辛いって思っていた一年だったけど
「こんなにあったかい気持ちになれたんだから…」
きっと来年はいい年になる
そう思った。
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