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掃除も終わり工場側から缶ビールと未成年の俺には缶ジュースが配られ本年の仕事が終わる。
「仕事始めは六日からだからな」
挨拶して作業員たちは各々帰り始めた。
俺は睦月のために少しでも早く帰りたくて作業服のままジャケットを羽織り帰ろうとしたところを
「藍原!」
担当長とその後ろに工場の社長がいて、二人に呼び止められた。
「はい」
何だろう?って思いながらも二人に近づいていくと
「早いけど頑張ったご褒美だ」
二人から差し出されたのはお年玉で
「え?……あの…」
貰っとけって手をとられお年玉を握らせられる。
「あとこれは弟の分な」
可愛いポチ袋を二人から一つずつ渡されて俺は
「何泣いてんだ?」
涙を流していた。
二人が亡くなった父親みたいで俺は涙が止まらなくなってしまって肩を震わせていると
「子供扱いはお前が二十歳になるまでなんだからな」
二十歳になったらお前が弟にお年玉をやるんだぞ
二人から頭や背中を叩かれ
「藍原、大晦日にうちにおせち取りに来い」
ほら、弟が待ってるから帰った帰った
背中を押されて俺は二三歩足を進める。
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