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時計は深夜の1時をまわっていた。
ふだんの夜は、ジャージで過ごす。
スボンのゴムは伸びきってるので、ヒモを入れている。
毎回結ぶのが少し面倒だ…
車内の空き缶やゴミ袋を両手いっぱい持ちコンビニのごみ箱をあてにする。
深夜の割には人通りがある。
駅の繁華街から住宅街への通用道なのだろう。
そういえばズボンがユルいことに気付いた。
かじかんだ手で蝶結びを解く。
両手の指に引っ掛けているゴミ袋がちょっと邪魔くさい。
空き缶ふたつと指と指の間にキャップ部分を挟んだ空きペットボトルも自由を奪う。
歩きながら器用にズボンを上げる。
前から家路を急ぐOLが歩いて来る。
この時間帯のジャージ姿を見て警戒しているのがわかる。
(そうゆうんじゃないから安心して通りな!)
ヒモを結びながら、ポケットの財布と携帯が重いからズボンが下がるのか!と気が付いた。
あとは最後の蝶の部分をつくるだけ!
…が、絶対に一瞬下がる!
…いや、一瞬で輪が造れるか?
オレは念のため考えてみた。
下腹部に両手をやり、手の甲からあらぬ方向にそびえ立つペットボトルのシルエットを向かいの彼女はどう見るか?
…!!
待て!落ちつけ!
焦ってヒモを放したら終わりだぞ。
確実にズボンは落ちる。
ギロチンのように、そしてコケる…
いや、この場合、コケたほうが、かえってこっちが被害者っぽくていいんじゃないか?
もう彼女はすぐ目の前まで来ていた。
終わり
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