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と、深窓のお嬢様が口を開く。
「ぶえっくし」
「って汚い。なん汚いくしゃみだ、せめて口を抑えなさい!オッサンか!」
……千年の恋もマッハで冷却する。軽いときめき返せや。鼻がずるずると、おお…風になびくなびく。
「ええい、ちきしょうめい」
おお、江戸っ子みたいな、てやんでぇで鼻を啜ってそして、さりげなく隣の女子のスカートで手を拭きやがったよ。
気づくかと思いきや、先程からなにやら廃人のように細かく震えて、心ここに在らずだ。
それを冷めた目で見つつも、介護するはやたらにでっけー女子。
個性が豊かというか、珍獣の集まりだな。
「それよりも、今日はどうしたのです。 いつもなら、口を開けばあの朴念仁の話を永遠と語る貴方が」
「まったくだ、あの阿呆と何か在ったのか?」
「あ、」
「あ? なんです?もう一度おっしゃいな」
「 私
また
失恋
した
」
それから彼女の口から語られる、事の顛末を俺は聞き耳を立てていたワケだ。
そして、今――――
「キッチリと吐きなさい、 聞いてたのは、それだけ!?それだけかーッ!?」
聞いた事を問われ彼女に絞められてる。
「き、聞いたのはそれだけだ……だからお願いします、どうか手に持ったその血みどろが付着した木材から握った手から離して!!」
「ちっ」
あの澱んだ目を見て人生で本気で死を感じたが、神のご配慮か死神の気まぐれを起こしたらしい。 レシートほどの薄っぺらい命だが助かってよかった。
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