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「ねえ、お月さま。ぼくには、お月さまがとっても綺麗に見えるよ! だから、泣かないで!」
けれど、雨は降り止みません。雲はどんどん重く暗くなっていって、ついにはお月さまを完全に隠してしまいました。
ねこは、お月さまを泣かせてしまったことが悲しくて、また声をあげます。
「ねえ、お月さま。ぼくはお月さまを見ているのが好きだよ。きらきら光って、暗い道を明るく照らしてくれるから。お月さまの本当の姿がどんなでも、それは変わらないよ! ねえ、お月さま」
毛皮がびしょぬれになっても、お月さまの答えをじっと待っているねこ。
しばらくして、小さな小さな声が、厚い雲の向こう側から聞こえてきます。
「わたしは、嘘つきなの。だましてごめんなさい。でも、本当のわたしは綺麗なんかじゃないの。綺麗だなんて、嘘だわ」
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