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お月さまの苦しそうな声に、ねこはいっそう辛くなりました。しょんぼりと肩を落として背を向けます。
「ねえ、お月さま。でもね、ぼくが、お月さまを綺麗だって言ったのは、お月さまを好きだと思う心は、嘘じゃないよ。本当だよ。……信じてもらえないかもしれないけど」
そうして、ねこはとぼとぼと屋根を下りて行きました。
残されたお月さまは、はっとして泣きやみました。お月さまの言葉が、ねこを傷つけてしまったことに気付いたのです。
「どうしましょう……。わたし、そんなつもりで言ったんじゃないわ」
お月さまは青ざめて、更に身を細めます。もう、空にも居場所がないというように。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
そうして、お月さまは白くなって明け始めた空に埋もれてしまいました。
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