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校門をくぐると、ここは本当に高校なのか?と驚くくらいに広大な景色が広がっていた。
4つの校舎に東京ドームより少し広いくらいのグラウンドと体育館。
さらに食堂、図書館は普通の高校の校舎並の大きさがあった。
中庭は並の高校のグラウンドと同じ大きさ。軽く公園まである。
極めつけには聖堂まで。
「…なんつー学校だ…」
とても学費無料の高校だとは思えないね。
「あにぃー!入学式体育館であるんだって!早く行こうよ~」
相変わらず梓のテンションは高い。
まぁ、さすがの俺でもここまですごい設備を見せられたらテンションが上がらないこともない。
だからとりあえず梓の提案をのむことにした。
「よし、んじゃ行くか。」
そう言って歩き出した時だった。
「……」
ふっと見た方向から一人の、言葉で表すには物足りないくらい綺麗な少女が、こちらを見つめていることに気付いた。
その少女の目の色は暗く、目を見ただけで絶望や悲しみといった感情が読み取れた。
「……っ」
こちらの目線に気付いた少女はふっと顔をそらしてたたたっと走り去ってしまった。
「…誰だったんだ…?今の…。知り合いにあんなに綺麗な女の子いないし…」
そもそも、あんなに綺麗な子が知り合いにいれば忘れることはないだろう。
「それに…あの目…」
まるで希望を失ったような悲しい目。
心を完全に閉ざしてしまったかのような表情。
何かに恐れているかのように震える体。
「…どうしたの?あにぃ?」
あの少女について考えていると急に立ち止まった俺が心配になったのか梓が声をかけてきた。
「あ、いや…何でもない。ただ少しあの頃の俺に似ている子がいたからさ。」
そういう俺に梓はニカッと笑い、からかうような目で見ながらこう言ってくる。
「何?ドッペルゲンガー?もー!あにぃったらオカルト大好きなんだから~」
「いや、そんな事実はない。ていうか俺がオカルトを信じたことさえない。」
俺は信憑性にかける話はあまり信じられない性格だからな。
「ふーん?ほんとかなぁ?」
「嘘じゃねぇよ!」
「ふふっ、わかってる。あにぃ、そういう話嫌いだもんね。さぁ、早く行こ!」
そういって手を伸ばす梓。
俺は、はぁ…とため息をひとつついてから早く行きたくて仕方ない、キラキラした目を向けてくる、梓の手を不本意ながらもとることにした。
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