─ 黒 ─

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 それはまるで    美しき蝶のよう…  今日もカナリアの声がする   決まった時間に   それはそれは残酷な歌を奏でる  どうかそのカナリアを  どうかそのカナリアを黙らせて  その細い首に…  その細い手足に…  釘を打ち付けて、飾ってほしい  美しいその声を…  美しいその肌を…   貴方のその手で  貴方のその手で切り裂いて欲しい  だけど私の望みなど、儚き砂の一粒にも叶わない     それはまるで    美しき蝶のよう…   カナリアは今日も鳴く  貴方の傍で  貴方の耳元で  貴方へ甘い歌を捧げる   …私の大嫌いな  …私の大好きな   貴方を奪ったカナリア   だけど  永遠に貴方の心は私のもの  貴方を縛って   離さない   其の目に焼き付かせてあげる   貴方がかつて愛した   私と言う蝶々を    それはまるで   美しき蝶のよう…  高い高い窓から飛んだ黒い蝶  それを見たカナリアは  美しい声で   高らかに歌った
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