1章

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「俺さずっと前から香苗の病気のこと知ってたんだ」 「何で俺に教えなかったんだよ」 理由次第ではぶん殴ってやると言わんばかりに睨み付けた。 「香苗に純に言わないで欲しいってたのまれた。純とまた会うようになった理由がお見舞なんて嫌なんだってさ。俺もお前と会う度話そうか悩んだけど、香苗の意思を優先した」 武は悪くない。悪くないけど僕の怒りは収まらず武へと向かってしまう。 「何が話そうと思っただ。病気で危なくなった時にすら連絡ないくせにデマカセを言うな」 「病気で死んだんじゃない。よく記事を見ろ自殺だったんだガンがよりによって喉に転移クスリで鬱気味だった香苗は転移の話しを聞いた次の日の朝早く病院の屋上から飛び降りた‥‥」 「嘘だ。そんなのガセネタに決まってる」 武の手から雑誌を奪いクシャクシャにしてゴミ箱に投げつける。 「昔はアイドル歌手の熱愛報道も本人の言葉より週刊誌を信じたお前にしては珍しいな」 武の言葉で無意識に武の顔を殴った。 武が倒れた姿を見た時しまったと我に戻った。 「やっと落ち着いたな」 武は殴られたにも関わらず笑いながら立ち上がった。 「全くやっと話しが通じそうだ。これで大事な物も安心して渡せるよ」 安堵の表情を浮かべ僕に叶絵のベストアルバムとボロボロのノートを取り出した。 「香苗セレクトベストアルバムと香苗の歌詞用のネタ帳。香苗がもしものことがあったら純に渡して欲しいって言われてな。縁起でもないから嫌だって断ったんだけど、遺書と一緒にこれを屋上に持っててた。全く俺を何でもかんでも伝言板にしやがって」 表情は笑って見せているが自然と武の目から涙がこぼれた。 「わかった、ちゃんと頂くよ。まったくお前殴ったせいで手が痛いよ。家に帰って氷で冷やさないと」 「おいおい、口から血が出てる友人の心配なしで自分の心配かよ。まあ、昔から素直な奴じゃないからな~。自分を責めるなよ、別に誰かが悪いっていう問題じゃないんだから」 「素直じゃないのはお互い様だろ。連絡するよ、またな」 心では武に感謝をしているが、中々面と向かってありがとうと言えない自分がカッコ悪く感じた。
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