初見

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俺は店の中に戻る気になれず、なんとなく携帯をいじった。 おっ あいつ忙しくなるとかいっときながら、メール2通も送ってきてんじゃん。 はぁ。 わかってたさ 彩香さんが一瞬暗い顔したことくらい。 咲夜の言ったこともわかる。 態度で表さなきゃ伝わらないってことぐらい知ってる。 でも違うんだ。 『お母さん』って呼べなかったのは恥ずかしいからじゃない。 受け入れられてないからじゃない。 きっと怖かったんだ。 初めて会ったばかりの人を、俺の記憶の最初の母さんにするのが。 『お義母さん』って口だけなら言えたかもしれない。 でも、そんなの彩香さんに失礼だ。 口だけだってことは、彩香さんならすぐに気づいたはずだ。 あの人は、なんとなくだけど、人の心をよむのが上手い気がする。 それに俺も、生まれて初めてその対象に『お母さん』って呼ぶのを中途半端にはしたくなかった。 俺の周りの奴らが口にする『お母さん』って代名詞は、実際ものすごく重い。
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