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「俺は、この16年で自分はあんまり変わってないと思うんだ。老けはしたけど、今でも由美のことは愛しているし、もちろん裕也もだ」
「それは見てればわかるよ。本当に俺の為に色々我慢してくれているのも知ってるし、その、すごく感謝してる」
「おぉ、ありがとう。面と向かって言われると恥ずかしいな……でもな、最近そこにもう2人加わったんだ」
「え?」
「いやその、お前と由美ともう2人、愛する人が出来たんだ」
「う、うん、いいことじゃん?父さんまだ若いし彼女の1人や2人いても不思議じゃないし」
いやなんだ2人って、ダメだろ。
若いとか関係なく倫理的にダメだろ。
明日から父さんを見る目が変わりそう。
「ちょっと落ち着けよ裕也。そんな無理した表情するなよ。実はもう5年交際してる人がいてだな」
「へ、へぇ~、5年かぁ。 俺まだ中1の時じゃん」
初めて知ったんだけど。
なんか寂しい様な、複雑な気分。
父さんはコーヒーを一口飲むと、少し緩んでしまった?をまたキュッと引き締めた。
「父さんはいつまでも由美の夫でいるつもりだ。これからも変わらないし、お前のこともずっと愛してる。そのことはわかっておいてほしい」
いつもならこんな小っ恥ずかしいことを言われると、何言ってるんだおっさんと笑うところだが、とても父さんの表情がそれを許さなかった。
「だけどな、由美とおんなじくらい素敵な人に出会ったんだ。その人も俺のことをわかってくれた。まだ心のなかに由美がいることも。それでも俺を好きだと言ってくれた。俺な、すごくその人が好きになってた。由美はやきもちをやいてるかもしれないけど」
そう言って父さんは、どこか懐かしそうに、幸せそうに笑った。
それと同時に、父さんが言っていた『生活に大きく関わること』もなんとなくわかった。
今日何度目かの深呼吸を挟み、余計真剣さを増した顔つきになる。
「由美と、母さんと同じくらい好きになった。俺はこの人と一緒に生きて行きたいと思った。裕也……俺はその人と再婚したい。」
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