第一話一章 どうみても不審者です

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「近くの診療所まで飛んでいく。離すなよ?」  迦楼羅くんが背中の翼を羽ばたかせた時、私は人生初の空中飛行を体験することになった。思ったより怖くない。むしろ、風が気持ちいので落ち着く。 「あのさ、診療所より知り合いの家に行って欲しい。治せる人がいるから」 「わかった。道案内頼むぞ。焔、そういうことだ、着いてこい!」  迦楼羅くんは空中から地上の藤本くんに話しかける。 「……俺は連れてってくれないのか?」 「ごめん、この翼二人用なんだ」 「お前はス○夫か……って待てよ、おい!」  迦楼羅くんは無視して飛び立った。下のほうで藤本くんが必死に追いかけているのが見える。ご愁傷様、と心の中で手を合わせ私は道案内を始めた。
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