28人が本棚に入れています
本棚に追加
「転校生……」
「私は転校生なんて名前じゃない……。上代 藍音です」
そう――彼女は、本日付けで俺の通っている学校、俺のクラスに転入してきた生徒だった。
驚きから漏らした言葉に、若干不愉快そうな声を返す上代。
しかし彼女の視線が此方を向く事は無く、彼女の目は唯もがき続ける化け物を捉えていた。
その視線に未知への恐怖は無く、少女の瞳には強い決意と憐憫の情がたゆたっている。
『うぅゥ……うるあァァぁ、ぎぁぁやゃァァぁッ!』
「そう……。貴方は自分自身に喰われてしまったのね」
「か、上代……?」
「けど、安心して。今……私が貴方を楽にしてあげる」
何処か苦しみを訴える様な叫びに彼女は何か意味のわからない事を口にし、スカートのポケットから携帯を取り出す。
「これから見る事は忘れて。深く関われば死ぬ事になるから」
「は……?おい、それって一体どういう意味だ?」
相変わらず意味の分からないことを口走りながら、異形を前に携帯を操作しだす彼女。
が、今度は此方に向けられた声だと言う事が明確だった為、俺は彼女に問い掛けを返す。
しかし彼女は携帯を操作する指を止めず、問に答えもしない。
最初のコメントを投稿しよう!