イラスト

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「陛下、今まで数々のお心遣い大変恐縮で御座いました。では、アリシア王妃殿下によろしくお伝えください。」 「ご苦労だった国の次代は心配無用。アリシアはよい子を産むだろう。」 ああ、最期まで残酷な方。 私だけを愛してなんて安い高望みはしなかった。ただ彼の女を愛おしげに抱くのに対して、何て機械的に私を抱くのだろうと絶望しただけ。それでも彼女と重ねて、冷えた心で熱い眼差しで抱くからいつまでもしがみついてしまった。けれどもうお終い。私は自らこの怠惰で腐った関係に終止符打った。 その終止符がなんて簡単に打ってしまえるのだろうかと、少し嗤ったけれど。 数ある恋愛物語で、私を当てはめるとしたら愛する恋人たちの仲に水を差す、政略だけの婚約者。そんな役。 ああ、陛下、それでも私は確かに貴方を 愛していました。
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