イラスト

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「陛下、いけません。  ここは正門ですっ」 再会してより後、終始落ち着きを払っていた元王妃は慌てたようにそう零す。 王城には当然の事ではあるが門が幾つもある。その中でも取分け表向きである上、周知の意味を含めるものが正門に当たる。 国王が元王妃と一頭の馬に二人乗りをして、正門を潜り帰還した。元王妃が行方不明である事は一応秘匿されている。公式に発表等していないからだ。 それがどうだ。 国王が飛び出して行ったかと思えば、元王妃を伴って正門から帰ってきた。 国王はいつ外に?公式な発表等なかったのに…… 何故元王妃が同乗しているのか。馬はどうした? そもそも出掛けていたのにお供も付いていないのはどういう事か。 何処へ行っていたのか。 出迎えの準備等聞いていなかった今回は、つまり緊急事態だったのか。 城内で働く者の頭の中で様々な憶測が飛び交い、時折周囲と状況を確認し合い更に困惑を深めていく。 国王には勿論わかっている。 元王妃はもしかすると国王よりも現実的に今の状況を捉えていたのかもしれない。 聞く耳を持たない国王を諫める為に、前を向いて動揺を悟られないように微笑みを湛えたまま背後へと掛けた言葉に、国王は鼻息を吐いて答えた。 「門を間違える程耄碌しているように見えるのか?  勿論正門である事も、その意味も理解している」 元王妃は余りの言い草に一瞬目を瞑る。 「そうだったな、間違えた」幼い頃から王城で育った国王が、そう零す程に耄碌していた方が今言われた言葉よりも幾らか良く思える程度には状況は最悪だった。 「何という事を……」 思わず口からそう零した瞬間、騒めきが更に大きくなる。 何? 振り返ると背後に密着する国王の更に後方に、甲冑ではなく節に皮を用いた行軍用の鎧を身に着けた兵団が見えた。 その姿はよく目立ち、国王と元王妃の背後の追随して現れたように見えなくもない。 「ありゃプーカ国の騎士団か?」 「何だ?プーカの行事のお出かけか?」
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