序章:始まりは必然で……

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寒い…… ただ寒くて、目が覚めた 今日は四月一日 春だと言うのに、まだ冬のように寒い 炬燵(こたつ)やストーブ等の暖房が今は必需品だ 少年は布団から出ると、自分の肩を摩るように抱く それ程までに寒いのだろう 摩りながら、部屋を出て居間に向かった 少年の名は狭桐 深哉(ハザキリシンヤ) 狭く深いという、よく分からない名前を持っている 両親とはとある事情で、別居している そして、今日は受験で合格した高校の入学式だ 深哉の通う高校は、ごく普通の学校 大きくなく、小さくもない 広くなく、狭くもない 生徒の人数も、多くなく、少なくもない 頭の良い学校とは言えないが、莫迦な学校でもない 普通の学校なのだ 高校の名は理珱高校(リエイコウコウ) 深哉がこの高校にしたのは、ただ近いと言うだけ 家の二階の窓から覗けば、学校は見える 「寒いな……」 誰かに言う訳でもなく、深哉は呟いた そして、チラッと時計を見て時間を確認する 11:28…… まだ入学式には余裕がある 理珱高校の入学式は、午後の12時30分から始まる 入学式の内容は、高校に着いたら自分のクラスを確認し、体育館に行く 体育館では校長等の先生のとても長い話しを聞き、終わったら自分の名前が書いてあったクラスに向かう クラスに着いたら、学校と担任の自己紹介 そして、教科書等が配布する ここからは予想だが、恐らく皆自分の自己紹介をする事になるだろう 深哉はあまり自己紹介等が得意ではない 人見知りというか、口数が少ないというか…… だが中学時代では結構友達が居た その友達の中の何人かも、同じ理珱高校と言っていた そのため、皆知らない人という訳ではない 深哉は冷蔵庫の中を確認し、昼食の準備を始めた
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