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そして、後ろにいた皆が桜庭に群がっていく。桜庭の持つ携帯電話や、地面にある物なんかを桜庭に聞きながら触る。
「どうしたの、望?まさか、まだ信じていないのか?」
皆の背中を見ていた私に、明が声をかけてきた。
「信じるわけないでしょう。でも、もし仮によ。
本当に、アイツの言う違う世界があるのなら、私はアイツを殺してしまうかもしれない」
「こっ殺すって!?どういう意味?」
「言葉そのものよ。私たちは、ずっとこの虐げられた生活をおくってきた。
けど、アイツはそんな私たちを踏みにじるような平和なとこからやって来たのよ?
羨ましい、妬ましい。殺してしまいたいほどに。
もちろん、そんなことしないわ。数少ない人間だからね。
けど、私はアイツとは馴れ合う気はない」
「望…」
私は桜庭を睨み付け、皆から背を向けた。
多分、初めてだと思う。皆へ敗走の背中を見せるのは。皆から遠ざかったのは。
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