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そう、いつもの日。
いつもの清々しさ、毎日の楽しみ、日々の良さ、日常の興奮。
そんな美しくて素敵で平和な日が、ずっと続くと信じて疑わなかった。
「やっほー、元気ぃ?佐々川 鈴(ササガワ スズ)ー?
今日も素敵な笑顔だねー。少し、私も見習おっかなぁー?」
学校に着くなり、目の前から元気な声がかけられた。
「おはよう、夜宵。あなたは、いつも元気だから、それでいいんじゃない?」
おはようと、いつものように元気な顔で挨拶が返ってきた。
神無月 夜宵(カミナシズキ ヤヨイ)。青いショートの髪、太陽に少し焼けた肌、私と同じ高校の青い制服を着ている。
とても仲良い友達。中学の時から、ほとんど一緒に日々を過ごしている。
「ええー?そうー?僕、元気しか取り柄がないよー。僕もう、受験生だって言うのに。
鈴と同じ大学に入らないと、見放されそうで怖いよー」
「そうよ、ちゃんと勉強しないといけないわよ」
「勉強、ねぇー。また一緒に勉強しよ!
高校の受験の時みたいに、さ!」
そう言いながら夜宵は持っていた鞄をあさぐる。
そこから、小さな袋包みを取り出した。
「これ、お菓子。いくつでも、私の得意なお菓子を焼いてあげるからさ、難しい所をリストアップしてー。
君のために、もっと頑張りたいからさ!」
お菓子を私に押し付けながら、拝む。
まったく、この子は。仕方ない。
私は呆れながら、彼女にノートを渡した。
彼パラパラと適当にノートを捲ると、嫌な顔で私を見た。
「やる気無くなった」
「あ、の、ねぇ!」
夜宵の米噛み辺りをグーでぐりぐりする。
「まったく。もういいわ。お菓子はいつものようにお昼、屋上で食べましょう」
「あれ?知らないの?あそこ、少し前に飛び降り自殺があったんだよ?
それで、もう立ち入り禁止。入れないよ」
「え!?そうだったの?仕方ないわね。今日はどこでご飯食べる?」
喋りながら、校舎へと近づく。
「んー、どうしよっかー。広間とかどう?あそこら辺」
夜宵が広場へと身を乗り出しながら指差す。
指差した所を見るべく、私も広場へ身を出した。
「あそこ?そうね、そうしましょう」
「きっまりー!」
それが、最後の笑顔だった。
ぐしゃり。
何が起こったのか?
頭と首が物凄く痛み、間近で聴こえる夜宵の悲鳴、お腹に感じる冷たい地面。
『目の前で』私の背中の上に重く、のしかかる暖かな人の体。
その日、私は死んだ。
ピーーーーーーーーーーーー
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