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「ああ?なわけ、無いでしょうが!こんな良い服、全部あいつらにひん剥かれて、処分されているのよ!
私たちが着れるのは、ただ、移る季節を過ごせることしか考えられていない、服だけよ!
私の服装だって、皆の服装だって、女や男、子供に老人全員が同じ服装。
もう、作業着って言っても過言ではない服なのよ」
「そ、そんなこと言われても。俺、違う所から来ているし」
「違う、所?外国ってことなの?でも、外も似たり寄ったりよ。
世界各国、全部が宇宙人の支配下だもの」
どうしよう、何て説明すれば良いんだ?普通に、タイムスリップしてきたって?
それじゃぁ、頭のおかしい人間じゃないか。
「全く、何言ってんだか。記憶喪失の次は、頭でも吹っ飛んだんじゃない?」
ああ、もう遅かったんですね。
「違う所って言うのは、違う世界からなんだ」
「はっ!?違う世界ぃ?ほんと、大丈夫なの?もしかして、マジで頭吹っ飛んだの?」
俺の言葉に、おかしな人でも見るような目で俺を覗き込む。
そりゃ、そうだ。けど、最後まで話してみよう。信じて貰えるか、定かじゃないけど。
「違う世界と言っても、俺はちゃんと地球人で、日本人だ。
けど、なんと言うか。世界線が違う、と言うのかな?
俺がいたのは、宇宙人が闊歩してなくて、侵略なんてされていないんだ。
1999年のノストラダムスの大予言なんて、嘘っぱちな世界から来てしまったんだよ」
「………………」
うっわぁー、冷めた目で俺を見ている。痛い人間にされているよ。
「信じて貰えないのは、解っている。でも、俺にとってはここ自体、信じられないんだ。
俺が居た世界はそれなりに平和で、俺が歳を取っても安泰した日々が殆ど保証されていたんだ。
だから、俺はこんな服を着ている。証拠は少ないけど、この服装が何よりの証拠なんだよ」
「ちょっと、待ってるんだ。皆と話してくるから」
俺の必死の訴えに納得したのかどうか、わからないけど彼女は考えながら後ろの人たちの所へと向かった。
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