第26章

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9月最後の火曜日。 学校が終わると、いつものように○○駅のバス亭へと足早に向かう。 早めにバス亭に行って由梨さんを待つのが習慣になった。 1分1秒でも長く由梨さんと一緒にいたいし 今日は何を話そうとか、どんな服着てるのかなとか、あれこれ由梨さんのことを考えながら待つ時間さえ、俺にとっては特別な時間だ。 バス亭に向かって歩いてくる由梨さんをイチ早く見つけて、軽く手を挙げる。 それに由梨さんがふわりと笑顔で応えてくれる。 アーモンド形の瞳が涼しげに微笑むんだ。 ―――俺だけに。 それは最高に幸せな瞬間。 他人が聞いたら大げさだって笑うかもしれない。 普通の恋人同士みたいに付き合って、由梨さんを独り占めしていたら、きっと気づかなかったと思う。 これは手を繋ぐこともできない、電話やメールさえままならない、歯がゆい関係だからこそ感じられる幸せ。 片想いのご褒美。 .
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