第26章

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今日はガトーショコラ無いんだな…。 テーブルの上の手書きのケーキメニューを見てガッカリした。 前にここに来たのはたしか5月の終わり頃だ。その時食べたガトーショコラがすごく美味しかったのに。 目当てのケーキがなくて拍子抜けしてると 「んー…どれにしよう…。」 小さな呟きが聞こえて視線を上げると、由梨さんが真剣な顔でケーキメニューを覗き込んでいた。 唇をきゅっと結んで「んー…」と小さく唸りながら迷う姿はなんだかコドモみたいで…… ……可愛い。 思わずクスっと笑いを漏らすと 「ん?なあに?」 メニューから顔を上げて首を傾げた。 そういう仕草もほんと可愛くて……。見てるだけでじんわりと胸が温かくなる。 「何でもない。ゆっくり選んで。」 再びメニューに顔を戻した由梨さんを、ほっこりした気分で眺めていた。 この時間がずっと続けばいいのにって思いながら。 結局、由梨さんは紅茶とベリーのタルト、俺はアイスカフェオレとシフォンケーキを注文した。
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