第26章

7/15
前へ
/477ページ
次へ
蒼子さんはケーキと飲み物をテーブルに並べると、俺たちを交互に見て「ゆっくりしていってね」と朗らかに微笑みカウンターへ戻っていった。 ミルクたっぷりのカフェオレをひと口飲んでから 「由梨さん……ちゃんとゴハン食べてる?」 気になっていたことを切り出した。 五分袖のカーディガンからのびた由梨さんの腕は、ぎゅっと握ったら折れちゃうんじゃないかってくらい細くて頼りない。 夏休みに会ったときから少し痩せたかな?とは思っていたけど…… 今の由梨さんはあきらかに頬とか体のラインが全体的にひと回りほっそりしてる。 どこか具合でも悪いんじゃないかって、心配になるよ。 「ゴハン?  食べてるよ。」 アーモンド形の瞳がぱちくりと瞬く。 「焼肉とか食べてる?」 「焼肉?……それはしばらく食べてないけど。    ……どうして焼肉?」 「やっぱりスタミナ=焼肉かなと。    ……由梨さん、少し痩せたよね?」 「あ……うん……。      最近ちょっとバタバタしてて忙しかったら……。」 はは……と笑う瞳の奥が微かに揺れる。 探るようにじっと瞳を見つめると、視線から逃れるように目を伏せてティーカップを口に運ぶ由梨さん。 その態度に言い知れぬ違和感を覚える。 「何かあったの?……もしかして、どこか具合でも悪い?」 「え?……何もないよ?    夏バテが少し長引いたかなーってくらいで。  あ、でも大丈夫。これからいっぱい食べてスタミナつけます。」 そう言ってパク、とケーキを頬ばった。 「んーーっやっぱり美味しいっ。」 「……。」 「裕二くんも食べたら?」 さらにもうひと口ケーキを頬ばると、満足そうににっこりと笑ってみせた。 夏バテ……か。 看護師の由梨さんが言うんだから、そうなんだろう。 さっき感じた違和感は、俺の考えすぎだったかな……。 いまいちしっくりこないけど、これ以上その話題にこだわるのもどうかと思って、俺もフォークを手にした。 .
/477ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加