第26章

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お互いのケーキを味見して「どっちもおいしいねー」とか、しばらく他愛のない話を続けていると、途中、ふっと会話が途切れた隙に 「ね……。聞いていい?」 ケーキをつつきながら、目を合わせずに由梨さんがぽつりと言った。 「ん?なに?」 ゆっくりとフォークをおいて顔を上げた由梨さんはとても真剣な目をしている。 「今も……、進学やめて就職しようって考えてる?」 「………っ」 真っ直ぐに向けられた由梨さんの視線。 今度は俺が、その視線から逃げるように目を伏せた。 「………。」 「………。」 テーブルが沈黙に包まれる。 俺は椅子の背に体重をあずけて、膝の上で組んだ両手をただじっと見ていた。 .
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