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「矢沢、真面目に成績について考えろよ?
有栖川が留学の希望ならお前は留年の危機だ」
先生の言葉にまさかと思い、ちらりと覗く彼のテスト結果。
0、0、0、3…
一桁っていうよりも、丸でいっぱいだ。
答案用紙だったならどれだけ幸せだろう。
「わぁ、一文字の違いで人ってここまで差が出るんだねー」
この成績で危機感を感じていない様子の矢沢くんに、頭がくらりとする。
『人間、頭が少し悪くたって、性格が良ければカバーできるんだよ』
昔どこかで聞いた言葉が、急にものすごい胡散臭く感じられた。
「あ、先生…私は席に戻って予習を……」
「あっ、ちょっと待った」
逃げに走る私に、無慈悲にも先生の待ったが入る。
すごく、嫌な予感だ。
「丁度良かった。
お前成績いいだろ?
矢沢に勉強教えてやって。
大丈夫。
矢沢が赤点回避出来るまでだから」
……嘘だ。
コレ絶対夢だ。
「え、いいの?!
ありがとうっ!」
「いや、私まだ何も言ってな…」
「じゃ、よろしくな」
ちょ!!先生!?
肩の荷が降りたように、すっきりとした担任の背中を、私は一生忘れないと、心に誓った。
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