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虎ノ介は、自分の従者が外へ仕事に行くときに、極秘扱いで調べさせているようだった。
その結果として冊子が手元に届いたのは、半月ほどたった頃だった。
「田中、亜弥……あや」
思わず零れ落ちた俺の呟きに、虎ノ介はぴくりと肩を強張らせた。そして何か言いたげな口を引き締める。
「何が言いたい」
近頃、虎ノ介は思う心を隠すのがうまくなった。それなのに、俺の胸の内は虎ノ介に見透かされているようで。
「……これ以上の調査は無用と存じます」
「無用?」
冊子から虎ノ介に視線を移すと、虎ノ介は眉をひそめて顔を伏せた。
「貴様、自分が言っている意味をわかっているのか? なんの理由もなしに無用と突きつけられて、はいそうかと納得する道理がどこにある」
「皇士郎様が御為(おんため)」
そのひとことに、どうしようもなく腹が立つ。
虎ノ介はそれを見透かしたうえで、淡々と言葉を紡ぐ。
「所詮は外の人間、住む世界が違うのです。それに、あなた様が興味を持つに足る人物ではありません」
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