暴君は一日にして成らず

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 言い返そうとした直後、手に持っていた冊子の間から、何かがばさりと落ちた。  音を目で追えば、畳の上に写真がばらまかれていた。  時が、パツン、と、乾いた音を立てて、止まった。  そして、どこまでも時間が遡る。  胸が熱くなった。痛くなった。写真に伸ばした指先まで、ちりちりと焦げ付くように痛む。  日付も時間帯も違った、数十枚にも及ぶそのどれもで、少女が笑っていた。  やはり、可愛いというには美しく、美しいというより、ただただ眩しく――。 「それは」無意識のうちで止めていたらしい息を吐きだしながら、「俺が判断することだ」  目が離せなかった。  目を離す手段を持ち合わせていなかった。  
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