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何故だか、新條の言葉が無性に気に障ってしまった。普段なら流すような、考えないような事柄のはずなのに。
〝制服着ているのに何故、確認をとる必要があるんだ?〟と最後の〝センパイ〟という一言に嫌味を込めて行ってしまった。
本当に何故だろうと、一段落ついた後に俺は考えることになる。
「気に障ったのなら謝るよ、すまない。ただ確かめたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
「君はもしかして福澤誠一君じゃないか?」
「なんで俺の名前……っ!」
咄嗟に出てきた一言をすぐさま止めたが、もう遅い。新條がほしかった情報はすでに肯定したも同然だった。
「じゃあっ!やはり君が…」
明るい顔になった途端、再び悩みだした新條に俺はもう付いていけない。
「新條先輩、友人を待たせてるので失礼します」
「ちょっ! ちょっと待っ……」
俺は必死に俺を呼ぶ新條の言葉など聞こえなかったかのように振る舞って、その場を後にした。
「セイちゃんったら何処まで行ってたのさ?」
「…あぁ、便所に」
「そうだったの?なら良いけど、それより、そろそろ帰らない?」
「そうだな、何だか今日は疲れた」
本当に精神的に疲れが押し寄せてくる。
久しぶりにちゃんとしたクラシック音楽に触れこともそうだが、一番の理由は思いがけない再会と最後のアレだ。
全ての原因は新條風吹。
俺が2年前、もう二度と顔を見たくないと思った奴だ。
1章END
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