I don’t have a mind

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《2 years later of previousstory》 偏差値が高い。 進学率が高い。 風紀が乱れてない。 そんな安全圏の高校に進学して、安定した将来を目指して気楽に生きる。 そんな平凡な生き方もありかもしれないと、2年という歳月をかけて俺は答えを導き出していた。 けれどこの2年もの間、唯一心の中で悔い続けていた『相棒』。 そう簡単に忘れ去ることなど出来はしなかった。 未練タラタラな様子で情けないが、あの日から一日も欠かさず『相棒』に隠れて向き合っているのが日課だ。 俺は人生で初めて「未練って怖いな」と、感じた瞬間だった。 私立奏聖舘音楽学大学付属の男子高等学校、略して奏聖高校。 この高校は日本でも5本の指に入るほど有名な高校でもあった。 その理由は稀に見ない特殊な内部構造をしているところにある。 普通科と芸能科そして音楽科という3つの学科で構成されている学校。 ここに通っている生徒は各方面で多大な活躍を見せる者や、エージェントに実力を見咎められ、未だ発展途上中の卵たちばかり。 いわば優秀な学生ばかりを集めた学校だからこそ、世界に名を馳せていた。 そんな学校に俺、福澤誠一(ふくざわ せいいち)は今春めでたく入学を果たし、そして既に5ヶ月が経過していたりする。 そう、当初の計画通り平々凡々に悠々自適な高校生活を送っている。 今は放課後前のホームルームの時間で、先月受けさせられた全国模試の結果が配られたところだった。 結果は予想どおりの順当で満足している。 「わぁお!セイちゃんってば凄いね、学期末だけじゃなくて全国高校模試でもトップだなんて」 「まぁ、成績は良いほうがこの先楽だからなぁ」 「はは、誠一ってば何時もそればっかだねぇ~」 横から勝手に覗き込んだうえ、乾いた笑みを送ってくるのは親友の我妻鏡(わがつま かがみ)。 見た目も話し方もチャラチャラしたチャラ男だが、頭だけはこの高校の普通科に受かるほどの実力の持ち主である。
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