125人が本棚に入れています
本棚に追加
それに今回はコンチェルト(協奏曲)のようで、演奏者がソロ演奏するには持ってこいの楽曲だった。確か、カガミの奴がウチの生徒はヴァイオリン演奏者だって言ってたよな。
協奏曲でソリストならばソイツの技巧も楽しめるかもしれない。
そう思っている内に、オーケストラの楽曲はソロパートへと変わっていった。担当するソリストがスゥッと一歩前へと出てヴァイオリンを奏で始める。
「あ、彼だよーセイちゃん」
「っ!……へぇ。アイツ、ね」
カガミの指さした先は直ぐに分かった。前へ一歩出たのは、柔らかな金髪をしたタキシード姿の青年だった。
【新條風吹(しんじょう ふぶき)】
まさか奴の姿をもう一度見る時が来るとは思わなかった。
確かに同じ奏聖高校の音楽科在籍だったが進級前にパリへ留学したはず。まさか楽団と共に帰国していたとは。
新條の姿をこの目で見るのは約2年ぶりだった。
2年という歳月は人を劇的に変えるらしい。
2年前にあったはずの子供っぽさが抜けた表情は美青年と称しても過言ではないほどの急成長を遂げていた。
昔も〝美少年〟だ〝天使〟だと持て囃されてはいた気がしたが、今はその比じゃないくらい騒がれているだろう、得に女性から。
(これは余談だが、新條が一歩出た時もソロ演奏だというのに客席がざわついていた。)
最初のコメントを投稿しよう!