I don’t have a mind

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ウロウロと彷徨歩いていると、周囲とは比べ物にならないくらい人が集まっている場所があった。 もしかして、と淡い予想を抱いてジィ~と凝視していると人と人の間から今日一日で見慣れた金髪がチラリと見えた。 やはりアレの中心は新條風吹だったか。 確認ができた俺は、丁度良い位置も見つけたので壁に寄りかかりながらその集団を眺めることにした。 …きっと、それが受難の原因の始まりだったのかもしれない。 ――俺には未練があった。同時に恐怖も…。 それを一変してしまうほどの大きな出来事が未来の俺の身に降りかかろうとは、今の俺には全く予想できなかった。 壁の花よろしく周りの風景を眺めていたら、俺にとって注目株だった新條集団に動きがあった。 集団の一部が綺麗に左右に割ると、そこから新條本人が登場した。 その光景はまるでモーセの十戒…いや、あれはまさしくソレだった。そうすると、周りに居る人たちは新條信者ってことだな。 それが嫌にマッチするので本気で笑いそうになった。こんな場面は例え風変りとも名高い奏聖高校の校内でも稀に見ない光景だぞ。 本当はクスッと笑い出しそうだったのだが、思わぬことに新條が俺の方に向かって来るから、無暗に笑えなくなってしまった。 しかも、あろうことか新條風吹は俺の目の前でその歩みを止めた。 「やぁ、こんばんは。君…奏聖高校の子、だよね?」 「・・・えぇ。そうですよ、センパイ」
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