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父、源左右衛門はもう長くはない。タケルはそう感じていた。囲炉裏に火を炊き部屋を温めた。夏とは言え盆を過ぎると夜は冷える。
母も覚悟を決めている様子だった。
「タケル…これへ」
父は枕元にタケルを呼んだ。
「はい」
「タケル…私はもう長くはない…代里…母を頼むぞ…」
「父上なにを気弱な…」
「…うむ…お前は弓の筋が良い…日々鍛錬を怠るな…事何事が起きた時にお前を助けるだろう…お前は武士の子…我が齋藤家は奥州藤原氏に長年仕えし家柄…そちには武士らしい生き方をさせたかったが…」
「父上…私はここの生活が嫌では有りません…」
「そうか…」
源左右衛門は目をつむり、目を開いた。
「そうじゃ…タケル…川の上流の湖に近づくなと何度となく言ってきたが…その訳を教えてやろう」
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