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「身の丈…三丈以上もある大亀が突如羆の足をくわえ、湖に引きずり込んだ…羆とて一丈近くある大熊…暴れ抵抗したが、断末魔の叫びを上げ湖に沈んだ…」
源左右衛門はその時の風景を思い出し口をつぐんだ。
「……わしはしばらく呆然としておった…はっと気付き急ぎ鹿を解体した。持てる肉全てを背負い…そして思わず羆が引きずり込まれた場所を振り返った……なんとそこに美しい少女が立っていた…少女は哀しげに湖面を見つめ、そしてわしの方を見た…目があった…わしは恥ずかしい話じゃが飛ぶように逃げ出した。…どうやって帰って来たか記憶に無いほどじゃ…」
源左右衛門は一息ついた。
タケルは父が作り話を言う人で無い事を知っている…しかし…信じ難い話しではあった。
「タケル…不思議な話じゃが本当だ…あの少女の悲しそうな目が忘れられない…」
(作者注:一丈=約3m)
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