1人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数日後、源左右衛門は亡くなった。タケルと母代里は源左右衛門の亡骸を火葬にふし墓に納めた。
「ここには線香の一本もないのね…」
代里は淋しそうに笑った。
その夜からだ。
タケルは夢に湖の畔に立つ哀しげな少女を見る。
時に何かを訴えるようにタケルを見つめるのだった。
タケルは鷹を飼っている。四年ほど前に 巣から落ち鳴いている雛を見つけ、持ち帰り懸命に育てた。
雛は大鷹の子であった。名をアサヒと名付けた。アサヒは兄弟のいないタケルにとって掛け替えのない存在だった。
タケルはアサヒがタケルの言葉が全て解っているのでは…と思うときが時折あった。
タケルもまたアサヒの言いたい事がわかる。時に複雑な感情をも理解できた。
最初のコメントを投稿しよう!