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相変わらずその少女は夢に出てくる。
何事か訴いかける眼差しが切に寂しげだ。
「えーい、クソっ…」
タケルは寝床を飛び起きた。
肩当てを付け、鳥小屋の戸を開けアサヒを肩に乗せ井戸へ向かう。
アサヒが肩から飛び立つ。
タケルは井戸で顔を洗いながら考えていた…湖の畔に行って確かめねば。
台所で母は朝餉の支度をしている。水くみ用の手桶を二つ持って、タケルは母に行った。
「母上…市が近いので何日か山に入ってきます…」
市とは年四回、近くの村に和人が来て、毛皮を塩とか布、鉄器などと交換する市がたつ。
「…もうそんな時季になりますか…どこに入られるつもりか?」
「アイベシの方へ行こうかと…」
代里は少しほっとした顔でタケルに問いかける。アイベシは湖とは反対方向だ。
「いつ出やる?」
「明日の朝早くに」
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