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粉糠雨が京の街を濡らしている。 そんななかを、浪人風の武士が笠をかぶり足早に歩を進めていた。 笠の所々には穴が開き、武士の顔に雫が落ちる。 旅慣れた足取りで大通りから小路へ入り、また大通りへ。 憑けられてはいぬか確かめるよう、また小路へと入って行く。 用心深くあたりを確認し、一軒の商家の前で脚をとめた。 「ここか…」 笠の端を上げ細い雨に目をしばたかせ、男は二階を見上げた。
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