始まり

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「御免」 裏戸を叩き男が言う 中で人の気配がし、すっと戸が開く。 「どちらはんどすか?」 15~6の丁稚が用心深く訪ねた 「土州の北添じゃ…はおるか?」 北添は名前の替わりに親指を突き出した。 名前を聞かれたくないらしい。 「御武家様のお顔を拝見」 男は笠を外した。乱れた月さやから雨が滴り落ちている。 「…ぷっ…確かに北添様…二階でお待ちです」
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