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北添はかまちの前の土間で雨を払い刀を外した。
さっきの丁稚が足洗いの盥と手ぬぐいを持って来た。
「お洗いします」
「いや、いい…」
男は草鞋をパンパンと叩き、丁稚から盥を受け取ると足を洗い始めた。
俯き洗いながら言った。
「おんし…うらの顔見て笑いよったろ…」
丁稚はいささか困った顔をして手ぬぐいを持ち黙ってたっている。
「どうせ二階の御仁が“芝天ににちゅうきすぐわかるろ”…とか言いよったんじゃろ…」
芝天とは土州で言うの芝天狗の事で、烏天狗の事らしい。
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