始まり

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「わかっちゅう…わかっちゅうが龍馬…ただ俺は蝦夷にはいかん…」 「桔磨!」 龍馬の声に珍しく怒気が含まれる。 桔磨は懐から四角に畳んだ和紙を取り出し火鉢の脇の机に置いた。 龍馬は黙っている。 桔磨は紙包みを広げ中に畳んである四角い油紙を広げた。 中にから紋白蝶が一匹出てきた 「これは、俺の心の師じゃ…」 龍馬は黙ってうながす。 「蝦夷地からの帰り白河の関を過ぎた時は春真っ盛りだった。…俺達一行が街道を江戸に急いでいるとき…俺の耳元を一匹の蝶がすーっと飛んでいった。天に向かって真っ直ぐにだ。…他の蝶がひらひら花に向かい地面の近くを沢山飛んでいるのに…」 桔磨は少し間を置いた。
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