1人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかっちゅう…わかっちゅうが龍馬…ただ俺は蝦夷にはいかん…」
「桔磨!」
龍馬の声に珍しく怒気が含まれる。
桔磨は懐から四角に畳んだ和紙を取り出し火鉢の脇の机に置いた。
龍馬は黙っている。
桔磨は紙包みを広げ中に畳んである四角い油紙を広げた。
中にから紋白蝶が一匹出てきた
「これは、俺の心の師じゃ…」
龍馬は黙ってうながす。
「蝦夷地からの帰り白河の関を過ぎた時は春真っ盛りだった。…俺達一行が街道を江戸に急いでいるとき…俺の耳元を一匹の蝶がすーっと飛んでいった。天に向かって真っ直ぐにだ。…他の蝶がひらひら花に向かい地面の近くを沢山飛んでいるのに…」
桔磨は少し間を置いた。
最初のコメントを投稿しよう!