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あの日のことは正直言う とよく覚えていない。 ただ、とても疲れていて 、何もかも嫌になってい た。 全て投げ捨てて、失踪で もしたい、そんな気持ち だった。 その原因も今となっては よく覚えていないのだけ ど。 あの人に出会ったのはそ んな日のことだった。 俺はぐったり疲れて目に ついたベンチに腰を下ろ した。 座ると、もう立ち上がる だけの元気も気力もなく なった。 軽く目を閉じただけで、 深い眠りに引き込まれそ うだ。 『大丈夫?』 可愛い声がして目を開け ると小学校低学年くらい の女の子がじっと俺を見 上げていた。 『どこか痛いの?』 無視してるとさらに子供 は聞いてきた。 それでも何も言わない俺 に暫く傍にいた子供は諦 めたのかどこかへ行って しまった。 それでいい。少しの間だ け一人にしてくれればい いんだ。 俺はまた軽く目を閉じた 。 『神父さま、こっち』
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