嘘と真実

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椎名と速足で会場へ向かうとようやく会場が見えてきた。 「椎名!あと少しだぞ!」 「う、ん!」 頬から汗を流しながら走っている椎名はなんかエロかった。 そしてようやく着いた会場の扉に手を伸ばし勢いよく開いた。 どうやらまだ劇は始まってなかったらしく幕はおりたままだった。 席に座っている生徒たちは俺と椎名が一緒にいる事に驚いている者や友達と話して盛り上がっている者などさまざまだ。 「あ、おい森本」 森本の後ろ姿を見つけ声をかける。 「会長、遅いですよ!もう始まるとこでしたよ」 「あぁ、すまない。」 「まぁ、間に合ったんですから結果オーラ…椎名?」 森本は俺に気をとられていて気づかなかったがやっと椎名に気づいたらしい。 椎名はといえば、気まずそうに下にうつ向いている。 「会長、なぜ椎名が?」 いつもより声が低い。 「あぁ、さっきエレベーターで会ってな。ほら椎名ここからは自分で説明しろ」 説明するのが面倒臭くなったとかそういうわけではないがここは椎名に話させるべきだと俺は思った。 うつ向いていた椎名だったが次の瞬間顔をあげ真っ直ぐ森本に向いた。 「お、れ…ゆう、好き、違っ、た。いまま で し、ごと…しない、ご、めん。これか、ら…ちゃん、とす、る!」 「よく言えたな。」 よしよし何て頭を撫でてやると椎名は照れくさそうにまた下を向いた。 しかし、ごめんで済んだら警察はいらないのである。 「会長はそれでいいんですか?」 森本は眉間にこれでもかという程皺を寄せながら俺に聞いてきた。 「仕事やってくれんなら、俺は何でも構わねぇよ。」 森本は軽く目を見開いたあと、またいつも通りの笑顔でフッと笑った。 「しょうがないですね、会長に免じて許してあげます。」 「あ、りがと!」 「お礼を言うのでしたら会長にしなさい。貴方の分までほとんど1人でこなしたのですから。」 「ん!かい、ちょ、ありが と!」 椎名の笑顔に癒されたのもつかの間、会場内にヴーというブザーがなった。おそらく劇開始のものだと思われる。 「さ、いよいよ劇の開幕だ!」
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