翻訳者の憂鬱

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「あのぉ……突っ立たれていても困るのですがー……」 黒い石畳の街中、袋小路の突き当たり。 そこに、バルド曰わく20分で着く、魔本屋はあった。 看板はかなり前のものなのか、塗られた色がほとんど剥げ落ちて、雨風に晒された木肌を覗かせている。 そんな誰も寄り付きそうにない古ぼけた書店の前に、一人の少女が立っていた。 「…………」 少女は、店員らしき青年を無言でじぃっと眺めていた。 身長も低く、まだまだ未熟なその少女は不思議な威圧感を放っていた。 「て、てんちょお~……」 集中力が切れたのか、青年は店奥の店長に助けを求めた。
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