翻訳者の憂鬱

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「全く、情けないですね。シラー君。」 店奥から、店長らしき声が響いた。 ロキとバルドは、少女の放つ威圧感に気圧され、少し離れた位置から様子を伺っていた。 「お嬢さん、困るのですよ。 私とて我慢がならない。 いい加減に入るか入らないか白黒つけなさいな」 店から出てきたのは、まだ二十歳にもなっていないような少年だった。 しかし、喋り方にはどこか落ち着きがあり、全体的に大人びていた。 「気をつけてね。クローディアス」 少女は深く響く不思議な声で言うと、足早に袋小路を駆け抜けていった。
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