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目覚まし時計が部屋に鳴り響き、その音によって悲恋思考がさえぎられる。
「あ…また…やっちゃった」
私はベッドから降りて、すぐに洗面台に向かった。
…これから仕事だって言うのに、また目が赤く腫れてる。
こうなる事は分かってるのに…仁を思い出すと、どうしても 止められなくなっちゃうんだ。
顔を洗い、そそくさと仕事の準備開始。
寝癖と癖毛のダブルでグシャグシャになった 茶色のロングヘアーにクシを通し、アイロンで伸ばしストレートに決める。
目は、何とか化粧で誤魔化し…
「…さて…お仕事行きますか…」
玄関に行き、フと振り返り誰も居ない部屋を見渡す。
何処を見回しても、仁との思い出達が沢山ある この部屋。
……いつもはね
私の方が出勤が早いから、振り返ると仁が居て…ニコッて笑ってくれてたの…。
「…いってきます」
―…いってらっしゃい!
返ってくるはずのない言葉が頭を回る。
また押し寄せる涙をこらえ、ドアに手を伸ばし、今日も仕事へ向かう。
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